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え、嫌ですけども⑦

 蓮先輩に連れられて入った空き教室は、机が全部後ろに下げられている状態になっていていて。  ココって何に使っていた教室なんだろう?なんて思わず観察するように眺めてしまう。  「結翔、こっちおいで。食べよ?」  キョロキョロと忙しなく視線を移動させている僕を呼んだ蓮先輩はいつの間にか窓側に座っていて、持ってくれていたお弁当を広げてくれていた。  いつの間に!?って慌てて頷いて蓮先輩の方に駆け寄って座ると、いつもみたいに隙間がないくらいピッタリとくっついてくれて。  それがなんだか嬉しくて、えへへって頬が緩んじゃう。  「それにしても今日の弁当すげぇな!いつも美味いけど今日はいつも以上に気合い入ってる気がする。かまぼこ、店のやつみてぇ」  「あ、かまぼこは父さんが切ったんですよ。僕、運動苦手だから今まで体育祭の時ってすごく憂鬱だったんですけど、今回は匠ともたくさん練習したし、蓮先輩の格好良い所が見れるんだなぁって思ったらすごく楽しみになっちゃって。思わず鼻歌なんて歌っちゃってたんです。それでびっくりしてた父さんに体育祭が楽しみだって言ったらすっごく喜んで、張り切って切ってくれたんですよ」  「そうなんだ。結翔の父さんってすげぇんだなぁ。それに結翔が楽しみだって言ってんのをそんな風に喜んでくれるって・・・結翔の父さんは本当に良い父さんなんだな」  感心したみたいにかまぼこをいろんな角度から見ていた蓮先輩に父さんを褒められて、嬉しいような擽ったいような気持ちになっちゃった僕はヘラりと照れ笑いを浮かべてしまう。  「えへへ・・・。父さんの事、そんなふうに褒めてもらえるの嬉しいです。ありがとうございます、蓮先輩っ!でも蓮先輩にうちの父さんを褒められるの、なんだか嬉しいし・・・擽ったいですね。それに僕の料理の師匠は父さんなので、僕も父さんみたいになんでも美味しく作れるようにもっと頑張りますねっ!」  そしてあわよくば蓮先輩の胃袋をガッツリ掴んじゃうのだっ!  ふんっ!って気合を入れ直した僕を何故か目を細めてジッと見つめる蓮先輩に気付いて、ん?って首を傾げるとそっと頬に手を添えられて。  気付けば僕の唇に少し冷たい蓮先輩の唇が触れていた。  「・・・んっ」  何度か啄むようなキスを僕に落とした蓮先輩はちゅぷりとわざと音を立てて唇を離し、今度は僕の耳元に唇を寄せる。  「・・・結翔の家族思いで頑張り屋な所、すげぇ好きだよ。でも俺、もうとっくに結翔に胃袋掴まれてんだよ?知らなかった?」  「へ・・・っ?あっ、まっ、蓮せんぱ・・・んぅっ!」  少し掠れた甘い声で囁かれ。  え?僕、もしかして声に出してた!?っていうか蓮先輩に頑張り屋な所が好きって言われた!?あれ!?夢・・・じゃないよね!?  なんて混乱している間に耳に何度もキスを落とされ、ちゅっ、ちゅっ、とリップ音が耳に響いて。  「は・・・っ、あ、んぅっ!ん・・・んぁ・・・っ」  ビクビクと体を震わせながら蓮先輩を止めようとしたんだけど、口からは意味のない甘ったるい声が出てしまうだけで。  されるがままになっていたらふにゃりと体の力が抜けちゃって、蓮先輩の腕にギュッてしがみついた。  「・・・可愛いな。もっとしたいけど後でゆっくり、かな。さすがに飯食わねぇとだし。せっかく結翔が頑張って作ってくれたんだしな。ほら、結翔には俺が食わせてあげる」  腕にしがみついた僕の頭を優しく撫でてくれた蓮先輩に耳元から唇を離さずそう囁かれ。    その甘いのに有無を言わせない声色にコクコクと頷くと、いつもデザートを食べる時みたいにヒョイっと蓮先輩の膝の上に乗せられてしまった。  

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