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え、嫌ですけども⑨

 額をグリグリと擦り付け続ける僕をギュッて抱き締めてくれた蓮先輩。  「あー・・・、結翔に喜んでもらえたなら良かった。むしろそんなに喜んでくれて俺の方がありがとって感じ」  ホッとしたようにそう呟いた蓮先輩の体からフッと力が抜けて。  蓮先輩、緊張してたのかな、なんて。  なんだか蓮先輩の可愛い一面が見れたみたいで胸がキュンってしちゃった。  興奮しすぎて頬っぺたが赤くなって、僕の心はフワッフワのぽやっぽやで、多分すっごくだらしない顔になってる気がするけど、もうそんなの気にならなくなっちゃった。  蓮先輩の檸檬の蜂蜜漬けを食べるのが何よりも最優先ですっ!  いち早く僕の体内に取り込みたい・・・!  ・・・・・・あれ?僕、変態っぽい?  でもでも、蓮先輩の手作りなんてレアアイテムだよ?誰でも取り込みたくなるよね?  ・・・・・・だよね、うん、そうだそうだ、僕がおかしい訳じゃないよね!  一瞬の間に脳内会議を終わらせて(頭の中の僕も蓮先輩過激派だから会議の意味は無い気もするけど)ウンウンって1人で納得した僕はパッと顔を上げる。  「蓮先輩、本当にありがとうございますっ!僕すっごく嬉しくてまだ心臓バックバクです・・・!それにしても美味しそう・・・食べても良いですか?」    「はは・・・っ!そんなに瞳キラキラさせて喜んでくれんの、すげぇ嬉しいな。ん、結翔に食べさせたくて作ってきたんだから食べて?」  破顔した蓮先輩が僕がギュッて握っていた瓶をヒョイっと取って、箸で檸檬を取り出してくれる。  反射でパカりとお口を開けて蓮先輩の箸を受け入れると、檸檬の香りが口一杯に広がった。  甘酸っぱくてすっごく美味しい!  モグモグ口を動かしながらパッと蓮先輩を見上げて、美味しくてキラッキラになっているだろう瞳を蓮先輩に向けてコクコクと頷いた。  「どう・・・って、聞くまでも無いくらい旨そうに食ってくれるな。ほら、落ち着いて」  ハハって嬉しそうに笑っている蓮先輩に、忙しなく上下に動いていた僕の頭を両手で掴まれてしまった。  「んぅ」  まだ口の中に檸檬が残っていたので喋れなくて、でもすっごく美味しいって蓮先輩に伝えたくて。  頭を蓮先輩の両手で固定されたまま、飲み込もうと一生懸命口を動かした。  「・・・ん、蓮先輩コレすっごく美味しいです・・・っ!」  やっとゴクリと飲み込んでそう言うと、蓮先輩が嬉しそうに笑ってくれた。  「良かった。もっと食べるか?」  「はいっ!食べたいですっ!」  元気よく返事をした僕にまたハハって笑った蓮先輩は何度か僕の口に檸檬を運んでくれて。  僕、ハッて気付いた。  蓮先輩が食べてない!嬉しすぎてスッカリ頭から抜けてた!なんて事だ・・・!  「蓮先輩、食べてないですよね・・・!気付かなくてごめんなさい。蓮先輩も一緒に食べませんか?」  「ん?んー、俺も結翔が旨そうに食ってくれるのが嬉しくて自分が食うの忘れてたな。じゃあ・・・、俺も食べようかなぁ」  さっきまでの嬉しそうな笑顔じゃなくて、ニヤリってちょっと悪い笑顔を浮かべた蓮先輩をキョトリと見上げると。  悪い笑顔のままグッて距離を縮めた蓮先輩にガブって噛みつかれるみたいなキスをされた。  「・・・・・・ん、俺はこっちが食いてぇなぁ」  唇を少しだけ離した蓮先輩に吐息混じりにそう言われて。  それだけで僕の身体はいつもの快感を思い出してふにゃりと力が抜けてしまう。  同時に頭も惚けてしまった僕は、これから与えられる快感と幸福に期待してしまいながらソッと瞳を閉じた。

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