side：田原蓮 　───ピピピピ･･･ピピピピ･･･ 　耳元で鳴り続ける携帯のアラームをまだ覚醒しきらない頭で止める。 　二度寝と決め込みたい所をグッと我慢して欠伸をしつつベットから降りてジャージを手に取った。 　本来なら寝起きはいい方なんだが、まだいつもより早く起きる事に身体が慣れていないみたいで次から次へと欠伸が出てしまう。 　なんで俺が欠伸をしながらも早起きをしているかというとだな、結翔に「走ってる蓮先輩も絶対に格好いいだろうなぁ！」なんて、期待したようなキラキラした瞳で見られてしまった翌日から早朝の走り込みを始めたからだ。 　もともと特に練習とかしなくても適当になんでもこなせるくらいには運動神経はいいし、そのままぶっつけ本番でも正直問題は無いんだが。 　結翔のあのキラッキラした瞳を曇らせる訳にはいかねぇからな。それに結翔には格好良いって思ってもらいてぇし。 　運動音痴らしい結翔が頑張って二人三脚の練習をしている様子を思い出して、っし･･･俺も頑張ろう、なんてまだ人通りの少ない近所をしっかりと走り込む。 　走り込みが終わったらシャワーを浴びて、適当にゼリー飲料を朝食代わりに食って結翔を迎えに向かう。 　迎えにいくと朝から結翔が嬉しそうな可愛い笑顔を向けてくれて。 　それを見ていると走り込みの疲れもすぐ吹っ飛ぶから結翔はすげぇと思う。 　んでもってさっさと昼になんねぇかなって思いながら適当に授業を受けて。 　昼になるとすぐ結翔の教室に迎えに行って、そのまま結翔を堪能する。 　たまに蜜樹が割り込んできてダルいけど、最近はまぁたまにだったらいいかってまた来たのかよって言うだけにしてる。なんせ言い寄ってくる面倒な奴ら全員蜜樹に丸投げさせてもらってるし、結翔が恋人になってくれた日から一緒に下校も出来てるもんで、昼休憩に思いっきりキス出来なかった日はデザート(結翔の唇)を食うのが放課後に伸びるだけって状況だし。 　まぁ1番の理由は結翔もなんだかんだ楽しそうにしてるってのが大きいけどな。俺と2人の時とはまた違ったちょっと辛辣な可愛い結翔が見れるから俺にも利があるのだ。 　んでまた早く放課後になんねぇかなって、昼に補充した結翔の事を考えながら授業を受けて。 　待ちに待った放課後になった瞬間結翔を迎えに行って、結翔の二人三脚の練習をハラハラしながら応援してから一緒に下校。 　んで、結翔ん家に向かう通り道にある人の居ない公園でしっかり結翔を堪能してから送って帰る。サヨナラの頬っぺたへのキスは必須だ。本当は唇にしたい所だけど、家の前だからな、俺も自重してる。 　･･･自重になってる、よな？ 　まぁいいや。それより結翔は二人三脚の練習をすげぇ頑張ってて、でも俺としては怪我して欲しくねぇから本当は適当な所でやめても良いと思うんだけど。 　でも結翔が一生懸命になって頑張ってる所を見ていてやめろなんて言えねぇだろ？好きな奴が頑張ってる事って応援してやりてぇじゃん。 　だから俺はすげぇ考えた。どうしたら結翔のサポートが出来るのか。 　俺と二人三脚の練習をするんだったら結翔が転ける前に受け止めてやれるんだが、あいにく結翔のペアの･･･なんだっけ、名前。 　あーっと･･･、そうだ、匠？と俺は体格差がありすぎて俺じゃ練習になんねぇし。 　色々考えてたんだけど、とりあえず怪我した時にすぐ簡単にでも治療してやれるように、ドラックストアで応急処置のセットを買って毎日鞄に入れておく事にした。結翔、毎回のように転んで擦り傷作ってるからな。しかもそのまま練習再開しようとするから心配だろ？ 　俺、基本怪我とかしても適当に洗ってそのままにしちまうし、絆創膏なんて買ったのほぼ初めてだったからどれ買うかすげぇ困ったけど。絆創膏って色々種類あんだな。 　絆創膏買った翌日にすぐ救急セットの出番があって、買っといて良かったって思いながら転けた結翔を回収して優しく洗って消毒して絆創膏を貼っつけた。 　そしたら俺に回収されてからずっとまん丸な目をして驚いていた結翔が、すげぇ嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれて。 　俺の結翔、マジで可愛いなぁって思いながら、結翔は頑張ってて偉いな、もし怪我したら俺がすぐ手当てしてやるからって頭を撫でたら可愛い頬っぺたを赤くして「本当ですか！？僕、もっと頑張りますっ！」なんてフンフンと気合を入れ始めたから、サポートの方向としては間違っていなさそうだってちょっとホッとした。 　いや、本当は結翔のちっちゃくて可愛い膝小僧に傷なんて作って欲しくは無いんだけども。断腸の思いで見守る事にしたんだ。正直結翔を押し退けて玉入れに出場する他選手に今すぐ変われって言ってやりたいくらいなんだからな。大丈夫だ、穏便に話し合いでもぎ取ってやるから。まぁ結翔がやる気になってるから言わないけどさ。 　しかしバイトがある日は放課後結翔と一緒に居られない。それだけが最近のどうにかしたい件だな。 　でも3年になって本格的に受験ってなる前にバイトして稼いどかねぇと。俺、結翔が卒業したらすぐ同棲してぇし。結翔に苦労はさせたくねぇから今から貯金しとかねぇとだからさ、バイトはやめらんねぇし。これがジレンマってやつ？ 　こんなような日々を繰り返して、本日やっと体育祭本番。 　結翔に格好良いところ見せて惚れ直して貰わねぇといけねぇからな、気合は充分だ。 ──────────── 読んでいただきありがとうございます⸜❤︎⸝‍ 今日からしばらく蓮先輩サイドのお話となります。 チュッチュしてた良いところでごめんなさい← しばらく結翔馬鹿になってる蓮先輩の頭の中をお楽しみいただければと思います〜！ 全然関係ないんですが、私の生まれた地域では絆創膏のことを「カットバン」って言う事が多いので何度もカットバンって書きかけました（笑） 絆創膏って色々な呼び方がありますよね。