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第43話 快楽と不安

「念の為聞くけど……あー……お前って、初めてか?」  ジェスの言葉に思わず赤面してしまって、俯いた瞬間にぽんぽんと頭を撫でられた。エミリオの答えを察したようだ。当然、誰かに恋をするのも初めてなら、こういった行為をするのも初めてだ。自分で処理をすることはあっても、誰かに抱かれるのはまったくの未経験。幸せだったが、怖いと思う気持ちがないわけではなかった。 「大丈夫だよ、大事にする」 「あ、あっ……!」  首筋に強く吸いつかれて、身体が勝手にビクビクと震えてしまう。 「……今日は全部はしないから、安心しな。ゆっくり慣らしていこう」  全部、というのはつまり、最後までしないということなのだろうか。ふわりと浮かんだ疑問はズボンの中に滑り込んできた手の感触に驚いて聞き返すことができなかった。  下着を押し上げていたエミリオ自身へ布ごしの愛撫が与えられる。先端をこすこすと指の腹で擦られて気持ち良くなってしまった。そうなることはきっと悪いことではないのだろうけれど、はしたなく喘いでしまう自分が恥ずかしくて、手で口元を隠した。 「だめだ。ちゃんと声を聞かせてくれ」 「やっ、ぅ……っ」 「エミリオ。声出せ」 「あっ……ゃ、だ……ぁ」  上下に擦られ、先端を刺激され、欲望が迫り上がってくる。熱いものが込み上げてきて、すぐに絶頂してしまいそうで熱い吐息を漏らした。そんな時にジェスの低い声が耳に響いてきて、その優しい声音にじわりと涙が滲んでしまった。 「ジェスさんっ……」 「ああもう、そんな目で見つめんなよ。いじめてるみたいじゃねえか」 「んんっ、ちが、う……きもちよくて……っ」 「それも反則だ」  ジェスはエミリオを一度絶頂させようとしているみたいだ。エミリオの肉茎を扱く手がだんだんと激しくなり、吐精を促すように握り込む力も強くなる。気づかぬ間に足を広げていたエミリオは、ふと自分が淫らな格好をしていることに気づいて慌てて足を閉じようとした。  しかし、ジェスがそれを許さない。膝を押さえて秘部が丸見えになるように足を大きく開かせた。 「そのまま、見せてくれ」 「だめぇ……っ、これ、だめ……だめっ……!」  先走りで濡れたそれをぬちゅぬちゅと刺激されて、エミリオはもう我慢できずにとろけた声で目一杯喘いでしまう。  もう膝を押さえられていないのに大きく足を開いたまま、ジェスに縋り付いて絶頂を迎えようとしていた。 「あっ……! い、く……っ!!」  短く悲鳴を上げて、エミリオはそのまま白濁の蜜を迸らせる。腰がビクビクとはねて、浅い呼吸をしながら全身を駆け巡る快感に身を任せた。 「はは、いっぱい出たな」 「っ……ごめん、なさい……」  ジェスの手を汚してしまったことに気がついて、エミリオはぎゅっと目を閉じて謝った。  しかし、ジェスは優しくキスをしてくれて何も責めたりしない。それどころか、額や鼻先にまでキスを降らせて、エミリオがリラックスできるように優しく「大丈夫だ」と囁きかけた。 「男同士のセックスの仕方、わかるか?」  急な問いかけに驚いたが、エミリオは小さく首を縦に振る。なんとなくではあるが、どのようにするのかはわかっていた。  ひとりで処理するとき、時々後ろが切なくなって、そこに熱いものを入れてほしいと思ったことが何度もある。だからきっと、そういうことなんだろう。 「じゃあ、その練習だ。今からココに指を入れるからな。痛かったらすぐ言うんだぞ」  エミリオの吐き出したもので濡れた指先を、窄まった場所にぴたりと当てる。蜜の滑りを借りてそこへ挿入するようだが、少しだけ怖かった。  呼吸がなかなか整わないエミリオは、熱に浮かされたような眼差しでジェスを見つめる。エミリオの不安を汲み取ったジェスは、その不安が落ち着くまで待つように穏やかな眼差しでエミリオを見つめ返した。

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