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第45話 朝

「……このまま前も後ろもいじっててやるから、もう一回イこうな」 「っ、あ、あ……だめ、おかしくなるからっ……」 「たっぷりおかしくなろうぜ。お前が気持ち良くなってくれたら、俺も嬉しい」  力の入らない腕で必死にジェスに縋りつき、額を押し付けて顔を見られないようにするのは、自分が間抜けな顔をしているに違いないと思っているからだ。気持ち良すぎて聞いていられないほど甘い声が溢れてしまう。ジェスはそれをまんざらでもない顔で聞いているけれど、エミリオは耳を塞ぎたい気持ちでいっぱいだった。 「エミリオ……本当に、夢みたいだ」  愛している人から求められているという幸福感がないわけではない。ただただ、淫らな自分を間近で見られることがたまらなく恥ずかしくて、怖かった。震える嬌声をすべて聞かれ、その手に蜜を溢れさせた肉茎を握られて、たまらない快感に侵されている。  誰かに触れられるというのは、こんなにも感情が揺さぶられるものなのか。 「――――」  ジェスが何か言っているのに声が遠くに聞こえる。  エミリオは絶頂が近づいてくるのを感じ、全身に力を入れてその感覚に備えた。  先走りの蜜を使ってくちゅくちゅと肉茎を擦られ、後孔も指で暴かれ広げられて、もう我慢できない。 「あ、ッ……あ、あ……!!」  頭の中が真っ白になる。こんな感覚は今まで味わったことがない。  わけもわからなくなり、一際大きな声をあげて二度目の絶頂を迎えてしまった。  蜜がとめどなく溢れ出し、もう何も考えられない。  このまま快楽に溺れてしまうのが怖かったが、こみ上げてくる快感に引きずられて延々と嬌声をあげていた。 「愛してるよ、エミリオ――」  ジェスの言葉を遠くに聞きながら、エミリオは気が遠くなるのを感じた。 ***  何かあたたかいものが頬に触れている。人肌のぬくもりだ。優しく頬を撫でられ、エミリオはその心地よさに少しずつ覚醒していった。 「ん……う……」  しばらくそのぬくもりを味わっていたかったが、エミリオははっとして目を開いた。目の前にはジェスが横たわっている。慈しむような眼差しでこちらを見て、指先でエミリオの頬を撫でていた。 「おう、朝だぞ。そろそろ起こしたほうがいいかと思ってな」 「……ジェスさん……」 「どうした? まだ寝ぼけてるのか?」  気持ちがまだ夢の中にいるようにふわふわしている。寝て、目が覚めたら目の前に恋人が横になっていて――。  寝起きの頭では、これがどういう状況なのか理解するのに時間がかかってしまった。 「っ……!!」  そうだ、エミリオはジェスの手で絶頂して、そのまま眠り込んでしまったのだ。  慌てて身体に掛けてある毛布をめくると、きちんとズボンを身につけている下肢が目に入る。ジェスが後始末までしてくれたのだろう。裸のままではいけないと、衣服まで整えてくれたようだ。  そんなふうに甲斐甲斐しく世話をされて、一気に恥ずかしくなりエミリオは頭から毛布をかぶって縮こまってしまった。 「おいおい、どうしたんだよ。今更後悔してるのか?」 「そうじゃなくって……っ、恥ずかしい……から」  大切にされている証だとわかっているけれど、それはそれだ。この恥ずかしさはどうにもならない。ごそごそと毛布の中で悶えていると、慰めるように背中をさすられた。 「恥ずかしがるなって。大丈夫、綺麗だったよ」  そう言われてますます顔を出せなくなる。全部見られて、しかもそれを綺麗だなんて言われて、平気でいられるわけがない。  エミリオはしばらくの間毛布の中で丸くなって心が落ちつく時を待った。

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