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3.一月二日、三日(15)

 この四日間で明らかに隆人との関係は深まった。今までは一方的に愛撫されるだけだった遥が、隆人の肌にキスをし、隆人のものに触れ、口を使って快楽を与えることすら抵抗なくできるようになった。  隆人が息を飲み、喘ぐことは、遥の悦びだ。  隆人は自分を鳳とは不可分と言ったが、肉体は加賀谷隆人というただの男だ。隆人が遥の愛撫に感じてくれることは、特別の肩書きのない隆人に近づいた気がする。  そして、快楽に悦ぶ自分を見られることにも抵抗がなくなった。それを見て喜ぶ隆人の心理が遥にもやっとわかった。  隆人が日常に戻れば、いくら隆人が遥の許に帰ることを増やすと約束したとしても、待つ時間が多いことには変わりはないだろう。隆人を呼びだすということもできるが、それを濫用(らんよう)したくはない。  いつという明確な指定ができないことを互いが知っている。だからこそ会える時間がより切なく、大切に思える。  隆人の剛直が遥を浅く深く突きあげる。それを逃がさぬように肉壁が絡みつき蠕動する。シーツに遥の茶がかった柔らかな髪がひろがり、乱れる。隆人の動きに合わせて顎は上がり、白い喉が無防備にさらされる。そこへ隆人が噛みつき、きつく吸った。 「い、た……」 「俺のものだ、遥。お前に、痕を残しておきたい。できるなら永遠に」  遥は隆人の目を見あげる。 「背中に、刻みつけた、くせに」  違うと隆人が首を振った。 「凰ではなく、高遠遥という人に俺を刻みつけたいんだ」  凰や鳳とは不可分と言っていた隆人の望みはまるで子どもの駄々のようで、愛しかった。隆人の首に腕を回して抱きよせ、抽挿を繰りかえす隆人に訊ねた。 「たとえ、俺が凰で、なくなった、としても、愛して、くれるのか?」  隆人が動きを止めた。 「俺はお前を離せない、もう」  目を閉じながら隆人の口づけを受けた。目の奥が熱くてたまらなかった。  隆人の突きあげが激しくなり、遥は隆人の体に脚を絡めた。より深くつながり、奥を開かれていく。 「あ、ひっ、ん、ああっ、あ、あ……」  抑えようのない声が絶え間なく漏れ、蕩けきった中をかき混ぜられ、突かれて遥は涙をにじませた。 「いい、たか、ひ、もっ、と……」  全身が快楽に呑みこまれ、ひくひくと痙攣する。真っ白な閃光が迫ってきて、一気に弾けた。 「はるか、はるかっ」  肉を叩きつける音ともに奥に熱を受けとめた遥は笑みを浮かべていたのに気づかなかった。  軽い夕食を摂った後も、本邸で過ごす最後の夜を惜しんで二人は何度も求めあった。  遥の首筋や頬や額に口づけをちらしながら隆人が言った。 「年越しの儀は一族に鳳凰の仲を示し、安心させるために行われることになっている。だが鳳と凰にとってのは、仲を深めるためにある。仲が悪ければ和解し、仲がよければ二人きりでゆっくりと過ごす。相手のことだけを思って。本来はそれだけの話だ。――疑問は解けたか?」 「そ、か……。それだけの、ことだったのか」 「俺たちはセックス以外のことをしたか?」  笑ってしまう。 「してない」 「そうだろう?」  喉元を這う舌の動きに、遥は声をもらした。  あまりに現実離れしていた儀式に、いろいろ考えすぎていたらしい。もう儀式は終わった。遥は初度の年越しの儀を無事に成し遂げた。  耳元で熱くささやかれる。 「遥、愛している。お前を愛している」 「俺も……、俺も、愛してる」  喘ぎの中からそれに答える。  隆人と数えきれぬほどのキスをして、上りつめた。好きだ、愛していると言われ、遥もそれに懸命に応えた。  この男は俺のものだ。俺はこの男を守る。それが遥の誓いだった。  激しく追いあげられて絶頂を迎えた遥は、隆人の腕の中へ飛びこむように、意識を手放した。

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