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第2話 あざとさしかないのに堕とされる
数分と経たずに、カシャンっと響いたロックの解錠音。
無言で部屋に入ってきたのは、俺がオーダーした通りの、ゆるふわロングのウィッグに、可愛らしいミニスカートのメイド服を纏った男の娘。
足許は、黒のエナメル靴に真っ白なニーハイソックス。
ちらりと見える腿に映えるガーターベルトも堪らない。
予想通りの可愛さに、思わず口許がにやりと緩む。
入ってきた男の娘は、ベッドに座ったままの俺の前に立ち、キャラメル色の髪を揺らし、首を傾げた。
バサバサと音が聞こえそうなほど重ねられたつけ睫毛に、くっきりと描かれたアイラインに彩られた二重の瞳。
元の顔なんてわからないほど綺麗に施された、ばっちりメイク。
……なんだけど、何となくの既視感を覚える。
俺の熱視線が居心地を悪くしたのか、バツが悪そうに眉根を寄せ、瞳を游がせる男の娘。
数秒の後、目の前に佇む男の娘は、親指と人差し指を動かし、無言で“チェンジか”と問うてくる。
「しない、しない」
ぶんぶんと頭を横に振るい、両手を広げて見せた。
男の娘は、おずおずと近寄り、床に膝をつく。
俺の膝に両手を添え、顔色を窺うように、上目遣いに見上げてくる。
あざとさしかないその仕草に、可愛いとか思っちまうチョロすぎな俺。
胸に引っ掛かったはずの既視感は、その可愛さに、すぽんっと抜け落ち、掻き消される。
「名前は?」
無意識に、その頭を撫でていた。
この娘なら指名料を払ってでも、何度でも、お相手願いたいと名を問うた。
少しだけ身体を離した男の娘は、胸許につけている名札を見せてくる。
「チカちゃん?」
声にチカちゃんは、首を縦に振るって肯定する。
腹から胸へと迫り上がってくるチカちゃんに、俺はそのままベッドへと上体を沈めた。
バスローブの袷から覗く俺の胸許に、ピンク色に彩られたチカちゃんの唇が触れる。
ちゅっと、わざとに立てられたリップ音が俺の耳を擽る。
何度も立て続けに、その音だけが部屋に響いた。
バスローブの袷から、するりと忍び込んできたチカちゃんの手が下着の上から、やんわりと俺の股間を握った。
俺のペニスは、まだ半勃ちだ。
ムードを盛り上げようと頑張るチカちゃんは、掌全体で俺の股間を弄りながら、首筋に淡く噛みついてくる。
わかりやすい煽りなのに、俺の背がそわりと震えた。
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