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第10話

ついに受け入れる準備が出来た日、私は彼を止めた。こんな中年が初めてではいけない。恵咲くんにつり合う相手がきっといるはずだ、と。自分で言っておいて、彼の隣にいる誰かを想像して、傷ついた。震える私を落ち着かせるように、彼は腕を優しくさする。そして言葉を発した。お兄さんの峰一さんは此処にはいません。僕も大人だ。誰にはばかることもない。驚きのあまり声も出なかった。彼は私の過去を知っている。一拍置いてまた彼が話し出す。貴方は小児愛者では無い。俺だったから好きになった…そうでしょう?彼は全てを見透かし理解していた。彼の瞳の前では隠し事など出来ないのだ。彼はゆっくりと私を抱きしめ、耳元で、好きだと言って、と切々と響く声で言った。 『…私なんかが』 『清さんがいい。』 『…っ、…君を置いていった私だ』 『どこへ行っても見つけ出してみせます。』 より強く、強く抱かれる。消え入りそうな声で、好きだ、と。好きなんだ、と溢れる気持ちそのままに告げた。いちばん受けとめて欲しい人が、俺も愛しています、と返してくれた。止まらぬ涙を拭われる。深く唇を奪われ、それに全力で応える。口に出さずとも、繋がっても良い、という私の決意は彼に伝わった。準備の出来た場所に、彼がゆっくりと入ってくる。奥に到達するまでの間、苦しいと同時に心が満たされてゆく感覚があった。感極まって彼の名前を呼べば、同じように呼び返される。彼はすぐには動かず馴染むのを待って、ぴったりと隙間なく密着する。こんなにも自然に彼と繋がれていることで、多幸感に包まれていた。 『…受け入れてくれて、ありがとう』 急かしてごめんなさい 『もっとゆっくり距離を縮めたかったけど…誰にも渡せないと思ったから』 謝る仕草が昔と変わっていなくて 思わず笑みがこぼれる。 『いいんだ。』 少し強引なくらいじゃないと 私は意固地なところがあるから 『これで良かったんだよ』 彼はもう一度 ありがとう、と言って 切羽詰まった様子で 動いて良いですか、と聞く。 色気を含んだ表情にドキリとする。彼の言葉にうなづけば、ゆっくりと抜き差しを開始された。擦られるとどうしても反応してしまう箇所があり、彼にしがみつけば、気持ちいいですか、と不安げに聞かれて、素直に気持ちが良い、と返した。興奮して濡れた声で名前を呼ばれて、意思とは関係なく後孔がうごめく。それをきっかけに彼の動きが変わった。激しい律動で、身に余る悦楽が押し寄せ、大きな声が出る。恥ずかしくて、体温が上がる。 『あっアッ、はァ、ンッ…どう、にかな りそっ』 思ったままのことを言えば、より動きが激しくなった。唇を重ねながら、彼を受け止め続ける。敏感な箇所を擦られる気持ち良さが、より高みを目指すような感覚に眼を見開く。自分でコントロール出来ない悦楽が、どんどん大きくなって、すがる手に力が入る。触れてもいないのに、達しそうになって驚く。ダメだ、と途切れ途切れに伝えれば、イッてください、と最後とばかりに律動を強める。お互いの息づかいと、肉のぶつがる音を、恥ずかしいと感じる余裕さえない。ひたすらゴールに向かって、ふたりで駆け抜ける。 『ン、ふッ ぁ…も、イッ イク!』 『ふ、は…俺もッ出ますっ』 ふたりほぼ同時に達する。精液がじわりとナカで広がる感覚に震えた。さらに肉壁に塗りこめるかのように、ゆっくりと何度か抜き差しされて、知らずに声が漏れる。落ち着いたのを見計らって、ひと息に抜き去られた。余韻でヒクつく後孔をなぞられ、傷はついていないかを確かめられる。切れていないかを確認されているだけなのに、感じてしまう。次いで遠慮がちに、指が入ってくる。すみません、ナカのモノを出さないといけないので、と後孔をひろげられる。何度も指が往復し精液をかき出されるうち、意図せず前立腺に触れられて前が反応してしまう。物欲しそうにきゅうきゅうと彼の指を締めつける。彼の熱視線を感じ、思わず名前を呼ぶ。切羽詰まった声で呼び返されて、もう一度だけ良いですか、と次いで投げかけられた。高ぶっておさまりがきかないのは私も同じで、彼の言葉にうなづいた。 『あ、アッ!いっ ン、ぁ…』 ゆっくりと彼が入ってくる。思っていたよりもすんなりと、奥まで到達した。身震いする私をよそに、すみません、と律動が開始される。お互いに余裕なんか微塵も無くって、ただふたりして行為にふける。身も世もなくあばきにかかる彼を、真正面から受け入れる。言葉が届かぬ場所に触れ、触れられてめいっぱい満たされた。後ろから突かれていて顔は見えないが、それでも何故か彼の限界が近いことが手に取るように分かる。まるで感覚を共有しているようだ。ひっくり返されて正常位で、ラストスパートをかけられる。見つめ合って、キスをする。何度もついばみ合って、お互いを強く意識する。このまま溶け合ってしまうんじゃないか。それほどに境い目が曖昧になるほど交わる。 『ひ、ァ ン もっイッ…クっ』 『う、ん はッ 俺も、イ、キますッ』 ふたりとも、ほぼ同時に達した。内側からの刺激でむかえた絶頂は長い長い余韻を残した。ビクつく身体をさすられ、いだかれる。そうして落ち着くまでただ肌身を寄せ合っていた。ゆっくり引き抜かれて、身震いする。気遣うように頬に手を添えられ、大丈夫だという意思を伝えるため、その手に頬ずりし返せば、彼は笑った。

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