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イジワルな恋心 5

そんな事を考えていたら、 「おい、渚!」 「えっ?!」 俺を呼んだのは橘ではなく望月で、 橘というと、黒瀬先輩と話しててこっちには目もくれないでいる。 ほっしーは早々に、失礼しますって言って帰っちまったし。 「なぁ?渚は好きなコとかいるのか?」 「なっ!?なんなんですか、いきなり!!」 「いや、なんとなく。」 ニヤリとしてなんか思わせ振りな望月は、それ以上何かを言うわけでもなく生徒会室を出ていった。 何なんだ? 「相原!おまえももう帰れ。オレと黒瀬で戸締まりしてから帰るから。」 やっぱりだ……何だかいつもの橘と違う気がする。 あれ程までに、俺にちょっかいを出してたやつが、どうして…… だけど、 バカな俺にはその理由なんて分かるわけもなく、 昨日…“俺のモノになれ”と言われたことも、 息苦しいほど抱きしめられたことも、 単純な俺は、アイツの気まぐれがもたらしただけだって思ってしまったんだ。 ……俺の奥底に芽生えた恋心が動き出していることも気付かずに。 そして、その数日後…… 橘と黒瀬先輩が付き合ってるという噂が広まった──── ────⋯⋯ ───⋯⋯

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