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春雷 4
玄関に靴を脱ぎ捨て、二階へ行こうとしたら、リビングから湊の声がした。
「にーちゃん帰ったならただいまくらい言えよ!にーちゃんの好きなアニメ今始まったとこだよー!!」
アニメ?
あぁ、そう言えばそうだった。
アニメには間に合ったけど今はそれどころじゃない。
「……今日は見ねーよ」
吐き捨てるように呟き、二階へ駆け上がって自分の部屋に飛び込み鍵をかける。
雨で濡れた制服のままベットにダイブして、ふーと息を吐く。
「にーちゃん!どっか具合でも悪いの?」
部屋の外で俺を心配してか湊がドアを叩きながら叫んでる。
「うるせーよ!どこも悪くねーから安心しろ、今日はもう寝る!」
「夕飯は?いらないの?!今日はにーちゃんの大好きな納豆巻きだよ?」
「いらねーよ!寝るから湊は下行ってろ!」
アニメもメシも何もいらねー。
もう何もかも遮断して眠りたかった。
グラグラする頭ん中で、油断すると蘇ってくる映像。
こまぎれのロードムービーのように浮かんでは消えを繰り返す。
くっそー
春とはいえ、一度ずぶ濡れになった制服はそう簡単に乾くわけもなく、じっとり肌に吸い付き気持ち悪い。
だけど、もう1ミクロも動きたくない。
俺はそのまま布団を無理矢理被って全て忘れるために強く目を閉じた。
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