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真実の鍵 37

「……んッ…んんッ………」 抱き寄せられ俺の髪を優しく撫でながらのキスは、なんだかいつもより甘くて無意識に夢中になってしまう。 でも、またこんなとこを誰かに聞かれたらヤバい。 「……ッ…お、おい…また誰かに聞かれたら…」 拒否したっていつものこいつなら完全無視なんだけど、 「……そうだな」 あれ? なんかいつもよりすんなり素直でちょっと面食らった。 そして唇を離す前にチュッともう一度軽くキスして、そのまま俺を至近距離で見つめながら、 「………渚、うち来るか?」 なんて、どこか色気のある顔で言うから、俺は思わず頷いてしまった。 * 学校から橘のマンションまでは歩いて約10分。 何故かお互い口数は少なく、無理やり繋がれた手だけは痛いくらいに強く握られてた。 「手、放せよ。」 「嫌に決まってんだろ。それに真っ暗でどうせ見えねーよ。」 「そういう問題じゃなくて……」 手なんかあんまり繋いだことねーから無駄にドキドキして、なんか心臓ヤバいっつーのに。 「今日くらい大人しく言うこと聞けよ。」 そうちょっとだけ拗ねたように言ったあとはまた黙ったままで、繋いだ手はいつの間にか恋人繋ぎに変わっていた。 「…………た、ちばな?」 ちょっとびっくりして見上げても返事もなく、学校を出てからずっとこの調子。 俺なんか変なこと言ったかな……隣の橘はいつもより明らかにおとなしい。 それに俺も一つ引っ掛かってることがある。 あいつ、いっつも俺のことは全部お見通しって言ってんのに、さっき……99%って言ってた。 自惚れてるわけじゃねーけど、100%って言われると思ってた。 ……俺が嫌いって言ったからかな。 繋いだ手はすごく熱いのに、頬を掠める夜風がいつもより冷たく感じるのはなんでなんだろう………

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