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愛しくて、優しい……人 4
背中から感じる速い鼓動と耳から充満していく橘の声は、俺の不安を消し去っていくように存在を確かなものにしていく。
だけど心はまだ苦しくて、俺はゆっくりと深呼吸をする。
そして、橘はまたゆっくりと話を再開させた……
「好きになればなるほど、不安が大きくなる。だから渚に嫌いって言われた時も頭の中が真っ白になった。自分からけしかけたのにな………」
やっぱり、気にしてたんだ。
「…………ごめん。俺だってあんなこと言いたくなかった。でも、俺だっておまえを守りたくて。それに俺の嘘見破ってくれると思ったんだ。」
絶対に見破ってくれると思ったから。
……でも、反応は違っていて俺は嘘を付き続けるしかなかった。
「言ったろ?おまえが絡むと余裕がなくなるって。………あの時だって余裕なんてなかった。」
……そんなの、
「そんなの、いつものおまえらしくないじゃんか。」
「だよな。俺にもわかんねーんだ。」
ぽつりと呟く橘は、本当に困ってるみたいだ。
俺様のくせにこんなの反則だぞ。
なんだか、無性にこいつの顔が見たくなって、後ろから抱き締められてた腕をそっと離し、向き合い今度は俺から抱きついた。
「…………渚?」
戸惑いながらもそんな俺を抱きしめてくれる優しい腕はちょっとだけ震えてる……
ふいに、見上げれば不安げな眼差しの橘と目が合い、
こいつを好きになって、初めて思った………
この人が、
────愛おしい
すごく、すごく、
愛おしくてたまらない
これだったんだ、さっきから苦しかったのは。
好きとは違う、
それは、
壊れそうなほど繊細な感情⋯────
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