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愛しくて、優しい……人 5
不安げに揺れる瞳を見つめながら、この思いを伝えたくて口を開くけど、
「俺、…………おまえが、」
その先が言えない。
ダメだ。
“愛おしい”なんて、恥ずかしくて俺には無理だ。
だから、せめて……
背中に回した腕に出来るだけ強く力を込めて、
「………………ごめん。なんでもない。」
口では………誤魔化した。
「いいよ、……ありがとう。渚のそんな顔見てたら、不安が浄化されてくみてーだよ。」
「え………?」
「………オレさ、渚に嫌いって言われた時、頭真っ白になったと同時に、あぁ…終わったって思った。渚以外と付き合うくらいなら誰だって同じだし、もうどうでもよくなって黒瀬にキスしようとしたんだ。」
淡々と静かに話す声が、よりリアル感を増す。
「でも、もしかしたら直前で渚が止めてくれるかもしれないって一瞬思って……僅かな望みに託した。これでダメなら、…………諦めようって……」
………マジかよ。
あの時、俺が止めなかったらマジで終わってたってことか。
「渚が好きだって言ってくれた時、すげー嬉しかったよ。と、同時にこれでよかったのかって思っちまって……」
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