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愛しくて、優しい……人 9
「さっき、“好き”の2文字じゃ片付けられないって言ったじゃん。」
「……………うん。」
「それ。」
「わっ、わかんねーよ!」
「ったく……。やっと手に入れたはずの渚を失いかけた時、気付いたんだよ……」
「…………え?」
「こいつを失うくらいなら、オレは何もいらない。こんなに想う気持ちは恋だけど恋じゃない。好きとはちょっと違うって。」
なんか、心臓がキュンて……いや、違う、
心臓をぎゅーって掴まれたみたいに、
一瞬…苦しくなって、
でもすぐに切なくてなって、
この鼓動の速さは、
理解不可能
ただ一つ分かることは、
これは大したことないなんて言う次元じゃないって………こと
だから、
心臓が破けそうにドキドキして、思わず目を反らしてしまった……
それでも橘は、
俺の髪を優しく、優しく触りながら、
言葉を繋ぐ………
それは、それは……優しい声で⋯────
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