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愛しくて、優しい……人 10
「オレは……
渚だからこんな気持ちになるんだ。
……………どうしようもないくらい、
渚のことを⋯────」
耳元で囁かれた言葉に、身体中の全細胞が溶けるように熱くなって、
全て溶けてなくなってしまうんじゃないかってくらい熱くて、
俺は必死に呼吸を繰り返した。
「渚…大丈夫?」
「ちょっと、まっ…て」
呼吸を整えて、少しだけ冷静になった頭の中に残ったのは今言われた言葉。
頭の中で繰り返す度に、どんどんと溢れてくる想い。
すごく………
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、
目を閉じているのに目蓋の裏側に涙が溢れてきて、それは頬を伝って流れていった。
人って不思議だ。
嬉しくても涙が出る。
「………も、もっかい、」
「………なに?」
「もっかい…言っ、て………」
「いいよ、何回だって言ってやる。」
ちゃんとこいつの目を見て聞きたかった、
生まれて初めてだったから、
こんなこと言われたことも、こんなにも想われたことも……
そして涙で滲むその先の愛しい人を見つめ静かに待った……
「オレは、渚以外何もいらない。
好きで好きで、好きでたまらなくて………
どうしようもないくらい、
渚を愛してる────……
────本気で、愛してるんだ。」
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