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愛しくて、優しい……人 12
「可愛い……」
「だっだから!かわいくっ…んんッ」
さっきまで俺のを咥えてた口で口を塞がれる。
キスをされるのはもう何回目だろう。
ふと脳裏に浮かぶ一番最初のキス
いきなりで、強引で、俺はわけがわからなかった。
男なんかと……
初めてはそれだけしかなかった。
だけど、今は……
「……ッ…んん…あッ…」
こいつの仕掛けてくるキスはすげー気持ちよくて……好き
「渚……好きだよ。」
俺を呼ぶ甘く低く響く声も、大好き。
身体中から溢れる“好き”に、
「俺、……っさ」
なんか今なら言える気がする。
「なに?」
「ゆ………」
「ゆ?」
「ゆ……」
ダメだ。
久しぶりすぎて……いや、恥ずかしくてやっぱ無理。
「いいよ……無理するな。」
俺もこいつみたいに素直に気持ちを口に出来たら……
「…………ごめん。」
もっと心が近づくのかな。
いつか、ちゃんと“優人”って呼べるようになるまで待っててくれるかな。
この役立たずの口でおまえの名を呼べる時が来るまで、
待っていてくれるのだろうか………
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