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愛しくて、優しい……人 28
「……………?!」
橘が、泣いて………る
なんで?
「おまえ………」
「………………ごめん」
なんで、謝るんだ。
他人にも弱味なんて絶対見せない、俺の前でも泣くほどなんて今までなかった。
なのに、
「………ど、どうしたんだよ?」
「………ごめん。何でも……ねーんだ。」
「……だ、って」
泣く理由がわからない。
俺、何か泣かれるようなことしたかな?
必死に考えてもその理由がわからなくて俺はどうしたらいいかわからない。
かける言葉が見つからなくて、せめてと手を伸ばし指先で涙を拭おうとした時、橘の手がそれを阻止した。
「………もう、大丈夫だ。続きするぞ。」
「大丈夫なわけあるかよ!なんでそんな……俺、おまえが気に障ることした?」
「渚のせいじゃない、忘れてくれ。」
そんなこと言われたって、はい、わかりましたなんて言えるかっ!
とりあえず理由が聞きたくて、身体を離そうとしたら逆に強く抱きしめられた。
「ちょっ!この状況で続きは無理だ、離せ!」
「………やだ。離れたくねーんだよ。出来ることならずっと、………ずっとこのまま繋がっていたい。」
こいつが言うとなんか大げさに聞こえる、なんでか分からないけど。
明日だって……明後日だってずっと一緒なのに……
なんでそんな風に言うんだ?
まるで、
明日が来ないみたいじゃないか………
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