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愛しくて、優しい……人 29

「おまえ大げさなんだよ、明日死ぬわけじゃねーし、何言ってんだよ、ばーか。」 「……………。」 この重い空気を変えたくて軽く言ってみただけなのに空気はまったく変わらない。 むしろ更に重くなった……? 「とにかく!これ1回抜くぞっ」 「だから、だめだって言ってんだろっ」 こいつの涙のせいで俺のはすっかり萎えちまったし、こいつのだってきっと…… あれ? ………ガチガチに堅いままだ 「なんで、萎えてねーんだよ……」 「だから、言ったろ…いやだって。渚に突っ込んでるのに簡単に萎えるわけねーんだよ、ほらっ……」 「ちょっ……んッ…」 何事もなかったかのように、俺の中を押し広げ律動を再開する。 「………ちょっ、ちょっと待て!まだ、話…終わって…ないっ」 いつもみたいに簡単に流されちゃいけない。 理由を、……ちゃんと理由を聞かないと なんで泣いたのか、泣くほどの何かをかけえているのか きちんと聞かないと俺は、きっと後悔する。 「橘っ!続きするならちゃんと理由を話してからにしろ!!」 いつも簡単に流されちまう俺だと思ったら大間違いだ。 肩を掴み無理矢理に押し離すと、橘は心底驚いた顔をした。 「ちゃんと、言えっ!!」 「…………はぁ……わかったよ。」 すると小さいため息を吐き出しながら橘が頷く。 そのまま俺の頬に触れたこいつの手は微かに震えていて、あんなに望んだことなのに今度は聞くのがちょっと怖くなってしまった。

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