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愛しくて、優しい……人 30

「笑うなよ?」 「…………は?」 「…………今日は、オレが初めて恋した日。」 「初めて、恋し……た日?初恋?!」 「そう。」 こいつ俺様のくせに案外記念日とか気にするタイプ……なのか? 「でも、泣くほどか?」 「渚にはわかんねーかもな。だから言いたくなかったんだよ。」 そう言って壁に掛かる時計に視線を移す。 それを追い掛けるように俺も時計を見ると、0時をちょっと過ぎていた。 初恋って、そこまで大切にするほどの子だったのかな…… ちょっと、モヤモヤ… 「……そ、そんなに、大切な初恋相手だったのかよ。」 「あぁ…大切だ、泣くほどな。」 ………ムカつく なんかムカつく。 こいつの初恋がいつだか知らねーけど、きっとすげー好きだったんだ。 「泣くほど大切なら…俺とこんなことしてる場合じゃないだろ?」 「……………かもな。じゃあ……」 橘が身体を起こし俺から離れようとした時、俺は無意識に腕を掴んでいた。 「…………なに?」 俺の知らない初恋相手に嫉妬してる自分が一番ムカつくけど、 「………やだ。やっぱ、やだ!!」 今は離れて欲しくない…… 離したくない……… 言葉にならない何かが身体中を駆け巡った…… それは、ただの嫉妬とは違う、もっと違う何か、 でも、今の俺にはそれが何かはわからない………

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