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愛しくて、優しい……人 38

眩しい日射しに微睡みながら重い目蓋を開くと、それが確信に変わった…… 俺が寝かせられているソファーから少し離れた場所で携帯で通話してる橘は、俺の知らない顔をしていた。 温度の感じられない声と冷ややかな表情。 いったい誰と話してるんだ。 ふと感じる胸の騒つき。 そして、言われたあの言葉。 言い知れぬ不安にどうしたらいいか分からないままでいると、いつの間にか通話が終わり橘は俺の傍に戻ってきた。 「気が付いたか?」 「う、うん。」 戻ってきた時の橘はいつも通り。 そしていつも通りの優しい眼差しで、俺の髪を撫でながらチュッと触れるだけのキスをしてくれた。 「意識飛ばすほど乱れた渚はエロかったなぁ…」 「うるせーよー!!」 やっぱりいつもと変わらない。 いつも通りの優しい橘だ。 きっと、俺の思い過ごしだったんだ。 寝起きで寝呆けて耳も目もおかしかったんだ。 きっとそうなんだよ。 そう苦し紛れの言い訳で無理矢理自分を納得させ、思い過ごそうとした。 大丈夫……… 何が大丈夫なんだかわからないけど、隣に居る橘に気付かれないよう、 そっと呟いた。 恋してるからちょっと切なくなってるだけだ。 不安なんて、何もない。 そうだよ、大丈夫だよ。 俺たちは、これからもずっと………

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