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アイツのいない世界 6

「知りたいってさっきから言ってるじゃないですか!!勿体ぶらないで早く教えてください!!」 「必死になればなるほどなんかあやしいぞ、渚?」 目の前の望月は、ニヤニヤしながら必死になってる俺をもてあそぶように確信をついてくる。 俺の態度が普通じゃないことくらい、もう分かってるくせに。 「ムカつく……」 「は?なんか言ったか?」 「別に。」 「じゃあさ、なんでそこまで必死なのか、理由教えてくれたら俺も教えてやるよ。あ、友達だから…とかはナシなっ。」 くっそー…こいつ絶対、俺たちのこと感付いてる。 でもこの際仕方ないよな…… 「わかりましたよ、教えます。…………俺と橘は、」 そこまで言いかけたとき、俺の腕を掴む望月の手を払いのけたヤツが…… そしてさっきの大声が致命的だったのか、払いのけられた拍子によろめいて、そいつが誰かを確認する前に意識が薄れていった…… 「………渚っ!大丈夫かっ!!」 ………な、なぎさ?! 俺のことを名前で呼ぶのって…… ………橘? 「渚っ!!渚っ!!おい、大丈夫か!!しっかりしろ!!」 そんな薄れていく意識の中、望月の声ではない俺の名を呼ぶ誰かの声だけが頭の中を駆け巡っていた────⋯

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