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アイツのいない世界 7
────⋯渚、………渚
低く響く…甘くて、優しい声……
やっぱり、橘だ……
帰ってきてくれたんだ……
つーか遅っせーよっ!
俺の気も知らねーで!!
────⋯渚、ごめんな。
謝ってもしばらく許してやんねーからなっ!
────⋯渚、ごめん…オレ、行かなくちゃ……
は?!
帰ってきたんじゃねーのかよ!!
────⋯ごめん。
おいっ!橘っ、待てよ!!待てってば!!
俺を置いて行くんじゃねーよ!!
行くってどこに行くんだよ!!
──────⋯⋯
────⋯⋯
「おい、大丈夫か?!おい!!」
遠くで響いていた声は俺を呼ぶ声で掻き消され、ぼんやりと意識が戻ってくるような感覚がした。
ゆっくりと目を開けると見慣れない天井で、
「おい、大丈夫か?!」
横を向くと向井が心配そうに俺を見ていた。
「…………む…かい……」
「気が付いたか……よかった……なんかうなされてたからさ。」
……うなされてた?じゃあ、今のは……夢?
「俺……いつの間に、保健室に……」
目を覚ましたら俺は保健室のベッドに寝かせられていた。
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