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アイツのいない世界 9

「俺……アイツ見つけないと…」 アイツ、まだ学校にいるかもしれない。 そう思ったら体が自然と動き出していた。 「何言ってんだよ、まだ起きたらダメだ!そんなフラフラなのに!」 「大丈夫だって。だから俺のことはほっといてくれよ。」 「ほっとけるわけないだろ!」 ただの寝不足だし、食欲もあんまりなかったけどちょっとは食べてたし、そんな大げさにすることないんだよ。 そう自分にも言い聞かせ体を起こしてベッドから降りようとしたら、目の前の視界がぐらついた。 「おい!だから動いちゃダメだって言ってんだろっ!」 向井に支えられ、ベッドに押し戻される。 「なんでそこまでアイツのこと気にするんだよ!」 俺を押さえつけたままの手に力が入っていく。 「いや………別に」 向井が疑問に思うのも無理ない。 まさか、親友が男と……尚且、生徒会長と付き合ってるとかどう考えてたってそこには行き着かないだろうし。 ………て、俺たち付き合ってるんだよな? ……今でも付き合ってるんだよ、な…? アイツがいなくなってから、正直どこまで信用していいのかわからなくなってきた。 付き合ってたと思ってたのは実は俺だけだった……とか。 いや、そんなわけない…たぶん。 くっそー……何なんだよっ。 俺がモヤモヤしているのをよそに、さっきから離そうとしない手に更に力を込め向井は言葉を続けた。 「なぁ、相原………そんなにアイツが大事なのか?」 「…………むか、い?」 「生徒会長の噂、この前ちらっと聞いたんだけど……」

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