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アイツのいない世界 10

「なんだよ、噂って。」 すると歯切れが悪そうに、向井は話し出した。 「なんか会長って、もう副会長捨てて次の恋人出来たらしいぜ?」 知ってる……つーか、原因俺だし。 捨てたってのもあながち間違ってねーけど、そんな事正直に言えるわけねーし。 次の恋人って多分俺だし。 でも今そんな話どうでもいいのに。 「だから?それと今関係ないじゃん。」 「だから、俺が言いたいのは……あんなタラシと仲良くするなよ。親友として、アイツとあんまり関わって欲しくない。」 タラシって……… 何を言い出すと思ったら。 「……はぁ?急にどうしたんだよ。なんか向井おかしいぞ?」 「おかしくない。俺はただ、生徒会役員同士だから一緒にいること多いのは仕方ないけど、なんか…相原まで遊んでるって思われるのイヤなんだよ。」 「なにわけわかんねーこと言ってんだよ。そんなことあるわけないだろ。それにアイツはそんなやつじゃない。」 「なんで分かるんだよ……なんでアイツの肩を持つようなこと言うんだ?」 「は?……ちょっ、腕痛い。離せよ!」 無意識なのか掴んでる腕はずっと力は入っててさすがに痛くてちょっとデカい声を出してしまった。 「……………ごめん」 するとすぐにそんな力ない声が。 向井、全くどうしちまったんだよ。 今日はやけに熱い……つーか、なんか何かに必死なような。 「……たくっ、おまえは馬鹿力なんだよ。で、別に肩を持つもりはないけど、遊んでるってただの噂だろ?別に気にしなきゃいいじゃん。」

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