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アイツのいない世界 12

「とにかく、俺は大丈夫だ。橘のことだって、アイツにもアイツなりの事情があってのことかもしれねーじゃん。親友として心配してくれるのは嬉しいけど、ホント寝不足なだけだから。」 「………でもよ、」 無駄に強がってみたけど、やっぱり向井は納得いかないような曇った表情だった。 でも、向井には悪いけど早く橘を捜したい。 たださっき俺が意識を失う時、橘の姿をこの目で見たわけではない。 声と肌に触れてきた感触だけ。 俺は橘だと思ってるけど、万が一、違う誰かだと過程したらその場にいた望月が一番有力だ。 あと考えられるのは………… 「なぁ、向井?おまえ、橘の姿は見てないんだよな?」 「………え?きゅ…急にどうしたんだよ?」 「おまえが保健室に来る間、望月以外誰とも会わなかったんだよな?」 「会ってない……けど。なんで?」 「おまえさ、時々俺のこと“渚”って呼ぶよな?」 「…………呼ぶ、けど……それがどうかしたのか?」 「いや、もしかして意識失う直前に俺を望月から助けてくれたの…向井だったのかとなって思って。」 こいつ嘘つく時、眉間に皺が寄るんだよなぁ。 自分じゃ気付いてないんだろうけど。 「助ける?おいっ、望月になんかされたのか?!」 「いや、されてない。廊下で会って、何してるんだって引き止められて話してただけ。そしたらふらついて意識失ったんだよ。」 「よかった……なんかされたのかと思った。望月って何考えてるかわかんねータイプぽいからさ。」 まぁ、確かにそーかも。 それにチャラいし。 「でも、それで倒れた相原を保健室に連れてきたのって望月なんだろ?」 「あ、………うん、たぶん。」

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