198 / 498
アイツのいない世界 12
「とにかく、俺は大丈夫だ。橘のことだって、アイツにもアイツなりの事情があってのことかもしれねーじゃん。親友として心配してくれるのは嬉しいけど、ホント寝不足なだけだから。」
「………でもよ、」
無駄に強がってみたけど、やっぱり向井は納得いかないような曇った表情だった。
でも、向井には悪いけど早く橘を捜したい。
たださっき俺が意識を失う時、橘の姿をこの目で見たわけではない。
声と肌に触れてきた感触だけ。
俺は橘だと思ってるけど、万が一、違う誰かだと過程したらその場にいた望月が一番有力だ。
あと考えられるのは…………
「なぁ、向井?おまえ、橘の姿は見てないんだよな?」
「………え?きゅ…急にどうしたんだよ?」
「おまえが保健室に来る間、望月以外誰とも会わなかったんだよな?」
「会ってない……けど。なんで?」
「おまえさ、時々俺のこと“渚”って呼ぶよな?」
「…………呼ぶ、けど……それがどうかしたのか?」
「いや、もしかして意識失う直前に俺を望月から助けてくれたの…向井だったのかとなって思って。」
こいつ嘘つく時、眉間に皺が寄るんだよなぁ。
自分じゃ気付いてないんだろうけど。
「助ける?おいっ、望月になんかされたのか?!」
「いや、されてない。廊下で会って、何してるんだって引き止められて話してただけ。そしたらふらついて意識失ったんだよ。」
「よかった……なんかされたのかと思った。望月って何考えてるかわかんねータイプぽいからさ。」
まぁ、確かにそーかも。
それにチャラいし。
「でも、それで倒れた相原を保健室に連れてきたのって望月なんだろ?」
「あ、………うん、たぶん。」
ともだちにシェアしよう!