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アイツのいない世界 13

向井は……白だ。 眉間に皺は寄ってなかったし、あの慌て方も演技とも思えない。 だとしたら、望月が全てを知っているな。 橘の居場所も知ってるってほのめかしてたし。 「ごめん、ちょっと望月んとこ行ってくる!」 「えっ?!ちょっ!まだ動いちゃダメだって、待てよ!」 引き止める向井を振り払って、ふらつく足取りで俺はベッドから降りた。 「何かあったらちゃんと向井に連絡するし、すぐに教室戻るから、だから教室で待ってて。」 「でも!」 それでも尚、心配そうな面持ちで俺の腕を掴み、引き止めることを止めない向井。 「望月に会ってどうしても確かめたいことがあるんだ!だから!」 「…………アイツの事?」 片手をドアにかけたまま、それとは反対の腕を向井に掴まれ、背を向けたままで返事をした。 「…………そうだ。」 「行くなよ…………」 「なんでだよ。おまえいつからそんな心配性になったんだ?大丈夫だから、手…離せって、な?」 そう言って振り向いて俺はハッとした。 そこには、今にも泣きそうな顔をした向井が俺を見つめていたから。 そして、次の瞬間……… 腕を思いっきり引っ張られたと思ったら、 何故か抱きしめられ、 「行くな…………渚」 そう、耳元で言われた………

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