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アイツのいない世界 15
「………向井、俺…さ。」
「あのさっ!心配でわけわかんなくなっただけだから!だから、気にするな!俺、教室戻ってるからっ、何かあったらすぐに連絡しろよ……じゃあなっ!」
「ちょっ!向井っ?!待てよ!!」
橘とのことを口にしようとしたら話す隙を与えられぬまま、向井はしきりに“気にするな”と繰返し、足早に俺を置いて部屋から出ていってしまった。
部屋を出てく時、一瞬、眉間に皺が寄って見えたのも気のせいなんだろうか。
とりあえず、今は橘の事が最優先だ。
渦巻く心をなんとか落ち着かせて、俺は保健室を後にした。
*
廊下を歩きながらもふとよぎる向井のあの顔………
なんか気まずいし、
まいったなぁ……
あいつとは馬鹿なことも言い合える仲だし、恋愛相談だってのったりしてくれてたのに、これからなんか気まずいじゃん。
つーか、あいつ確か彼女いたはず。
じゃあ、尚更一時の気の迷いだよな……うん。
引いては押し寄せる波のように、俺の頭の中で繰り広げられる“ありえる”と“ありえない”のオンパレード。
色々なことに疲れ果てた俺は渡り廊下の手前の壁にもたれ座り込み、目を瞑り深いため息を吐く。
色んなことがここ数日で一気に起こり過ぎて、俺の頭ん中は今にもパンクしそうでいっぱいいっぱいだった。
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