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アイツのいない世界 18
*
「とりあえず此処に座れ。」
愛用らしき椅子を差し出され、望月はタバコを吸う為か窓際に移動していった。
さっきは強がったけど、体調は相変わらず悪いままの俺は、素直に椅子に腰掛けることにした。
近くの、それほど大きくないデスクの上には、資料や本が溢れてて、そこに窮屈そうに置かれたマグカップの中には飲みかけのコーヒー。
「これ先生の趣味?」
「あ?」
マグカップにはくまの絵が書いてあって思わず聞いてしまった。
「………くま」
指差した先のマグカップに望月が視線を移し、ちょっと気まずそうな表情をしてるのがなんか笑える。
どう考えてもこいつのキャラじゃないし、でも実は可愛い物が好きとか……いや、これ以上具合悪くなりたくないから考えるのよそう。
「……貰い物だ。」
「彼女?」
「………まぁ、そんなもんだ。なんか文句あるか?」
なんだ、そういうわけではなかったのか。
でもチャラいくせにプレゼントはちゃんと使うとか、そういうとこは結構律儀なんだなぁ…なんて思ってると、いつの間にか目の前に来た望月は俺を覗き込み、ニヤリとしてまためんどくさいことを言い出した。
「なに、妬いてるのか?」
誰が妬くかよ。
望月なんか眼中ないっつーのに。
「悪いですけど、先生には興味ありません。」
「相変わらずバッサリだな。まぁ、興味あるのは生徒会長だろ?」
「……ほっといてください。それより、さっきの続き……教えてくれるんですよね?」
「いいよ?でも、さっき俺がした質問が先だろ?」
質問……なんかされたっけ?
………もしかして、、、
「渚と橘の関係だよ。教えてくれるってさっき倒れる前に言ったよな?」
言った……勢いで。
まぁ、もう今更っちゃ今更だけど。
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