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アイツのいない世界 19

「あの……今更ですよね?」 「は?」 「言わなくても、先生気付いてますよね?」 「何が?」 しらばっくれやがって! ぜってー気付いてるくせに言わせたいだけなんだよっ、ムカつく! 「はぁ………。 わかりましたよ、言います。そしたら先生も、全部教えてくれるんですよね?」 「あぁ、全部教えてやるよ。」 そして望月はまた窓際に行き、火を点けず咥えたままだったタバコに火を点け、俺の言葉を静かに待った。 「………俺たちは、付き合ってました。所謂、恋人同士ってやつです。だから、橘のこと知ってるなら教えてください……先生、これでいいですか?」 「………過去形なのかよ?」 「え?」 「………付き合ってましたって、今は違うのか?」 言われて気付いた…… 俺は、無意識にアイツとのこと過去形にしてた…… 「ち、違います!今でも俺たちは……付き合ってます。」 「アイツのこと今でも好きか?」 「…………す、好きです。」 「アイツが帰るまで待てるか?」 帰るって…簡単には帰ってこないってこと? 1ヶ月……半年……1年……? ぐるぐるする頭の中を必死に落ち着かせ、“待てます”と震える声で返事をした。 「…………わかった、」 そして、静かにタバコの煙を吐き出しながら、望月は言葉を繋げた──── 「さっき、渚を助けたのは、アイツ…………橘だよ。」

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