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アイツのいない世界 20

「ほ、本当ですか……?!」 「俺が嘘言ってると思うのか?」 「……いや、そう言うわけではないんですけど……」 正直こいつは信用出来ないから、半信半疑な部分もある。 だけど、俺が感じた温もりは間違ってなかったんだって思うと少し嬉しくて。 でも代りに膨れ上がるのは、橘はなぜ、帰ってきたのに俺を助けた後また居なくなってしまったのか。 それにさっき望月の言った、“アイツを待てるか”の意味も気になる。 「おまえさ、口でそう言いながらも、すげー疑ってる顔してるぞ。」 「だっ、て…………」 「あ、ちなみに、おまえを保健室まで運んだのも橘だ。あんな焦った顔の会長、俺は初めて見たな……ま、渚はこれも信じないかもしれないけど。」 「俺を運んでくれたのも、アイツ………」 ますますわからない。 そこまでして、なぜ俺をまた一人にしたんだ。 「どうだ、信じる気になったか?」 「一応………。でも、なんで?!……橘は、今も学校に居るんですか?!」 咥えていた短くなったタバコ。それを近くの灰皿へ押し消し、窓をガラガラと閉めながら望月はため息を一つ吐く。 「…………アイツならもう居ない。」 ────オレ、行かなくちゃ…… 保健室で聞いた声は夢じゃなかったってことか……… なら、ついさっきまで俺はアイツの近くに居たことになる。 なのに、なのに……… ちきしょー………! 怒りや切なさや寂しさ、そんな色んな感情が押し寄せてきて頭の中が混乱する。 だけど、今は望月に、アイツの知ってる全てのことを聞き出す方が最優先だと必死に気持ちを落ち着かせ、 「先生、アイツに何があったんですか?アイツはどこに………」 自分の足元を見つめながら、俺は絞り出すようにそう問い質した。

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