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アイツのいない世界 29
「ううん。それで、相原くんのことも僕言ったんだ……相原くんも心配してるから、ちゃんと話していきなよって。」
「………うん、」
「でも、………会えない、って。」
会えない………?
だけど、俺を助けてくれただろ?
しかも俺を保健室まで運んでくれただろ?
なのに………
会えない………って
「それでね…………」
そこまで言って、ほっしーは黙ってしまった。
「ほっしー………?」
「うん。それでね………僕はイヤだって言ったんだけど、どうしても伝えて欲しいって言われて……」
なんだかイヤな予感がする……
静まりかえった屋上で、ほっしーは、ゆっくりとそれを口にする。
「ゆうちゃんが、“半年経っても帰って来なかったら、オレのことは忘れて欲しい……”って……」
「………なに、それ………」
「僕も、相原くんはちゃんと待っててくれると思うから、そんなこと言う必要ないんじゃないって言ったんだよ。けど───」
「…………けど?」
驚くようなことは今日で何回も聞いた。
だけど、極め付けがこれだ……
「“その時は、オレは渚のことを忘れるから、渚もちゃんと忘れて欲しい”って───」
なんなんだよ、それ………タイムリミットまで勝手に決めやがって………
「なんでもかんでも勝手に決めてるなよっ!!」
言葉にし難い、苛立ちの声が屋上に響き渡った……
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