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アイツのいない世界 31
「確信はないけど…多分大丈夫。ゆうちゃん、自分を追い込む時って本気の時だから。」
本気……
「そ、そうなの……?」
「うん……。僕の知ってるゆうちゃんは、昔からそうだった。だから、大丈夫だよ。」
「………う、うん。」
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上手いことほっしーに宥められ、あれから教室に戻ると向井が心配そうに駆け寄ってきて思い出す。
なんだか色んなことが数時間の間に起こりすぎてすっかり忘れてたけど、こいつともちょっと気まずいんだったけ……
心配してくれるのは有難いけど、今は向井のことまで考えられない。
向井だって大事だ。でも今は自分の心を保つことで精一杯。
だから、心配いらないと微妙な距離感で告げ、早退してきてしまった。
向井……ごめん、こんな自分勝手な親友で……
*
うちに帰った途端に疲れがどっと出て、気付いたら寝てしまった。
そして次に目を覚ました時にはもう20時を過ぎ。
「うわっ、もう20時じゃん!」
ベッドから飛び起き、約束の時間まで1時間を切ったことになんだかソワソワして、なぜか正座して携帯を開いてしまった。
久しぶり過ぎてなんか、すげー緊張する……って、んなこと言ってる場合じゃねーんだよ!
俺はアイツに腹が立ってる、だから連絡があったら真っ先に怒鳴り散らしてやるんだ!!
そう意気揚々と携帯を閉じ、気持ちを落ち着かせながら、脱ぎ捨てたままだった制服をハンガーにかけた。
………でも、
久しぶりにアイツの声が聞けることは、ちょっとだけ嬉しい………かも。
腹立たしさの中にあるのは、コントロール出来ないアイツへの想い。
ムカつくくせに………
やっぱ、好きなんだよ……
アイツが………
意識した途端、何故か時計の針は異常に進みが遅くなった。
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