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アイツのいない世界 32
チカチカと時計の針が進むにつれ、バクバクと心臓の音が大きくなる。
くそっ、ムカつくな……
こんな自分がすげーイヤだ。
複雑な気持ちのまま、さっき制服のポケットから出したあのバッチを見つめる。
半年か………
半年後、ほっしーが言うようにアイツはちゃんと帰ってくるんだろうか。
だけど…………
ぼんやりしていると、携帯が音を立て鳴りだした。
時計を見るとまだ約束の時間より少し前。
慌てて携帯を開くと、やっぱりアイツからだった。
通話ボタンに触れ、一呼吸してからボタンを押し、耳に当てる……
「…………もしもし」
少しの沈黙の後聞こえてきたのは、久しぶりのアイツの声。
『……………渚………?』
耳から染み渡って全身に充満していくアイツの声は、俺の頭の中を真っ白にした……
そして、
俺を呼ぶたった一言だけで、視界が滲み冷たいそれは頬を伝って流れ落ちた。
『………渚、ダイから聞いた?』
「…………うん。」
『………怒ってるよな……突然居なくなって…………』
胸がいっぱいってこんな事を言うのかと思うくらい何も言葉に出来ない。
言葉を吐き出す代わりに溢れ出す涙を気付かれないようにするので精一杯で、俺は何も言えないでいた。
真っ先に怒鳴る気満々だったはずなのに………
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