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第9章 真夜中の密事 1
俺は…………
我が儘だと思う。
怒って、泣いて、待たないとか言い出して、
なのに……やっぱり会いたい、とか。
自分勝手なのは俺の方だ。
だけど、この想いを抑えることが出来なかった。
それくらい、俺は……
こいつが好きなんだ
だけど…………
────────
─────
「………ご…ごめん、今の忘れて……」
やっぱり、困らせたくない。
会いたいけど、こんなこと言うべきじゃなかったんだ。
「………………忘れる……から…」
まるで自分に言い聞かせるように、もう一度俺は呟いた。
そしてまた少しの沈黙の後、橘が静かに口を開く………
『…………予定が狂ったな……』
「え………?」
『………まさか渚からそんなこと言ってくれると思ってなかったからさ……』
電話越しの橘がクスリと力なく笑うとすぐ、深いため息が聞こえてきた。
「……………だって……」
だって、なんだかわかんねーけど、胸のここら辺がチクチクして、気付いたら“会いたい”って口にしてたんだ。
『………最悪を覚悟してたから、まさかこんな展開になるなんて思ってなかった。』
「最悪って?」
『別れるって言われても仕方ないと思ってた……それに、あんなことも言ったし……』
あんなことって……忘れてほしいとかなんとか言ってたことかな。
確かに、それもひっくるめてすげームカついたけど、俺の中で最後まで別れるというその選択肢はなかった。
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