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真夜中の密事 29

「……渚に名前呼ばれると身体がすげー反応すんだよ……」 「…………やっぱり。もしかして…俺が呼んで…イった?」 「………あぁ。最後に呼んでくれて…嬉しかった…」 最後……… 最後とか言うなよ。 まるで二度と会えないみたいな言い方しやがって。 「……最後…じゃ、ねーし」 “最後”って言葉に異常に反応してしまった俺は、俯いたまま不貞腐れながら否定した。 でも目の前の橘は、発した声が聞き取れなかったのか俺を心配そうに覗き込む。 「………なに?どうした?」 「………最後とか言うなよ!!」 顔を上げ少し声を荒げると、俺の中に埋まったままの橘のがまた大きくなった気がして、思わずそれを締め付けてしまった。 するとそのまま顔を近付け、押し付けるように荒々しくキスをされると、腰を揺らして再び律動が始まる。 「……ちょっ……ッ……」 「……ッ……たくっ…もう、時間あんまりねーのに……」 独り言のように呟きながら、俺を揺さ振る橘を覗き見すると余裕がない顔をしていて、それがたまらなく愛おしい。 ────こんなに好きなのに、なんで離れなきゃならないんだ……… 時間が経てば経つほど膨れ上がる、どうにもならないこの疑問。 分かってるつもりでも、やっぱり、イヤだ。 でも、こいつの事が好きだからワガママはもう言わない。 そう無理やり頭の片隅で誓い、俺は与えられる快楽にまた溺れていった。

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