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真夜中の密事 36

でもすぐに我が儘だと気付いて、俺はそのまま心で呟いただけで口にすることはしなかったのに、 「…………わかった。渚には適わねーな。」 こいつにはお見通しなのか、そんな返事をしてきたもんだから、思わず俺は顔だけ橘の方へ振り向いてしまった。 すると空かさず橘は、俺に覆い被さってきて、チュッと触れるだけのキスをおでこにしてきた。 「…………なっ?!」 「…………渚……唇にもキス、したい……」 そのまま至近距離から見つめてくる橘はすげー色っぽくて、俺はその顔に釘付けになる。 そして俺たちは、引き寄せられるようにお互いの唇を近付けていった。 あと少しで唇が重なる…… って時に、 橘のズボンに入ってる携帯が震えだし、膝枕してた俺のちょうど耳元でブーブー振動し出した。 「………うわっ、ちょ。」 「あ、………ごめん、ちょっと待って。」 俺を支える方とは反対の手でズボンから携帯を取出し画面を開くと、ちょっと不機嫌そうな表情に一瞬だけなって、すぐに通話ボタンを押した。 「…………もしもし」 こんな夜中に一体、誰なんだろう?

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