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真夜中の密事 37

* 「………あぁ、わかった。それでいい。」 数回繰り返された会話はわりと手短に終わった。 「………こんな時間に誰だよ?」 こんな夜中だからさすがに気になって背中越しに伺ってみたら俺を支えてる腕に力が入り、俺は戸惑ってしまった。 「…………たち、ばな?」 返事をする代わりに背中から更に強く抱きすくめられ、俺は何となく気付いてしまった。 「…………もしかして……」 「………渚……時間切れだ。迎えが、来る。」 やっぱり…… “時間切れ”と言う言葉を聞いて、頭では分かっていたはずなのに、どうしようもないくらい胸の奥が締め付けられた。 「………あと15分くらいで着くらしい。」 「……………そっ…か…」 「起き上がれるか?」 「……う、うん。」 抱きすくめられた腕の力が緩んで、俺を起き上がらせながら隣へと座り直された。 そして寂しげな顔した橘が俺へと静かに視線を移し、すっかり冷えきった冷たい手で俺の頬に触れると、俺の名前を口にして変わらぬ愛を囁く。 「………渚、好きだよ。だから……」 「分かってるよ。ちゃんと待ってるから。」 震えそうになる声を隠すように出来るだけ言葉を繋ぐと、頬に触れていた指先が俺の唇をなぞり、それが合図かのように瞳を閉じる。 するとすぐに、いつもと変わらない柔らかい唇が降りてきた。 でも、その唇が微かに震えているようで、俺は──── 「…………ちゃんと、帰ってこなかったら…承知しねーぞ」 ────そう、キスの合間に精一杯の強がりで返した。 「………帰って来るよ…必ず……渚のもとへ……」 「…………う、うん…」 いつも通りの優しいキスは、今度こそ俺たちの最後のキスとなる。 苦しくて、寂しくて、 果てしなく、切ない、 そんな愛しい人との最後のキス……

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