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真夜中の密事 47

「おい、橘!待てよ!」 「何してんだよ、早く来い!」 「何って、廣瀬さんにお礼言ってたんじゃん!」 一人、車を降りてさっさと歩いて行っちまう橘を急いで追い掛ける。 「爺、また余計なこと言ったろ?」 「言ってないよ!廣瀬さん優しくてすげーいい人じゃん。坊っちゃんをよろしく…って言ってたぜ?」 「余計なこと言ってんじゃん。……たくっ、爺のやつ……」 口では悪態を吐きながらも本気で怒ってる訳ではなさそうで、すぐ俺に振り返ると何も言わずに俺の手を取った。 「お、おい!」 「誰も居ないんだからいいだろ?」 「………そうだけど…」 すぐ先の角を曲がれば俺んちだ。 こんな時間だから家族のみんなは寝てると思うけど、俺がうちを抜け出したのがバレてたら誰か起きてるかもしれない。 まだ薄暗いから早々バレやしないと思うけど、湊とかに見付かるとめんどくせーからなぁ…… 「どこまで送ってくれんの?時間マジで大丈夫?」 「……ねーよ。だけど、ちゃんと送りたかったし、最後にもう一度……」 もう一度……と、言ったと同時に、俺を近くの電柱の陰に追いやり抱きしめてきた。 「………た、ちばな…」 「……もう一度、抱きしめたかったんだ……渚を…それに、喧嘩して雰囲気悪いまま別れたくなかった」 「べ、べつにもういいよ。俺だって……悪かったし……さっきは、ごめん」 最後は尻つぼみになってしまったけど、俺もちゃんと謝ることが出来てよかった。 「…………渚………」 抱きしめながら、俺の耳元で名前を呼ぶ。 大好きなその声が身体中に染み渡る。 そして俺は返事をする代わりに背中に回した腕に力を込めると、俺の頭をポンポンと軽く撫でられる。 ………すると、すぐに身体は離れていってしまった。

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