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運命の悪戯 8

「今まですげー好きだったはずなのに……ある日突然、気付いたら違う人を好きになってた…ってこと、よくあるもんなのかな?」 「なに、急にどうしたんだよ?!向井がそんなこと言うとか珍しいだろ?」 「あ……いや、彼女に他に好きなヤツでも出来てた場合、そう言うことが起きてるわけじゃん……だからだよ。」 こいつ、わりとナイーブなのか?! でもそんな悩むなんて、マジで彼女のこと好きなんだなぁ…… そっか。じゃあ、橘もある日突然……俺よりも好きなヤツとか出来たりしたら…… いやいやそんな日は来ない! ブンブンと頭を振って、くだらない思考をかき消してみたけど、絶対……ではないよな。 「……おい!相原?!おい!!」 「あ、ごめん……向井が心配するほど、簡単には乗り替えたりしないんじゃねーの?……て、思うけど。」 そんな弱気な自分自身に言い聞かせるように、更に念を押す。 「………わかんねーけど、その人を好きになったら簡単には嫌いになれないと思う。余程の事がない限り……」 「………余程のこと、か。」 「とりあえず、今度彼女に会わせろよ!親友として、色々聞き出してやるからよ!」 「親友……─── まぁ、そのうち会わせるよ。じゃあ、また明日な。」 「おう!また明日。」 電車が行き交う音に掻き消され、向井が何か呟いたことすら気付かなかった俺は、そのまま別れを告げお互い別々のホームへ歩きだした。

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