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友達以上、恋人未満 4

そろそろ時間だと、さっき買ったアメリカンドックの残りを平らげ立ち上がろうとした時、突然向井に手を引かれた。 「ちょっと待て!」 一瞬の出来事にされるがままの俺を引き寄せ、掴んでない方の手が俺の頬を掠める。 え……?って思った次の瞬間、遠慮がちに親指の腹で唇の端をなぞられた。 「……………。」 「…………ここ。」 「え………」 「…………ケチャップ、付いてる。」 そう言ってそのまま拭うと……俺を捕えたままの視線で、迷うことなくその赤く色づいた親指を口へと運び舐めあげる。 「……………ッ……」 その一連の動作があまりにも自然で……… しかもちょっとエロくて、俺は不覚にもほんの一瞬…… ドキッとしてしまった。 ……うわー!なんなんだ、俺!! 口に付いてたケチャップ拭っただけじゃねーか! 何、今さらそんなことで親友にドキッとしてんだよ!! ありえない!ありえない!! 「おい、百面相してねーで、早く行けよ………」 そう言ってフッと力なく笑う向井の視線には……もう俺を映していなかった。

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