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友達以上、恋人未満 21
『………話ってなんだよ。しかもわざわざこんなとこ……』
静けさの中に響く向井の声はしっかりと俺の耳にも届いて、それだけ静かなんだと気づかされた。
きっと、俺は今から聞いてはいけないことを聞いてしまう気がする。
さっきの鳴ちゃんの曇った表情を見ていたらそんな予感に駆られた。
『………ごめん、すぐに終わる。あのさ……』
重い空気の中、俺は二人の姿が僅かに見える出来るだけ気付かれない場所にしゃがみこんだ。そして息を殺しながら冷たいコンクリートの壁に背中を預け、二人の様子を伺う。
『……私たち、幼なじみからなんとなく付き合いだしたでしょ?』
『あぁ。それがどうした?』
『小さい時から一緒にいることが多くて、そのまま大きくなって…気付いたらなんとなく付き合ってた。でも私は、京太のことずっと好きだったから…付き合えた時はすごく嬉しかったんだ……』
『ど、どうしたんだよ急に……』
『でも、最近分かったことがあるの。………男女の幼なじみって実はすごく難しいのかなって……』
『難しいって…なに』
『……………私ね、京太のこと好きだけど……恋人と呼べるほどではないみたい。うまく言えないけど…存在が近すぎるって言うか、色々と分かりすぎて…………辛い。』
そう言った後の鳴ちゃんの横顔はとても悲しそうで…なんだかこっちまで居たたまれない気持ちになってくる。
『………意味が…分かんないんだ、けど……』
向井も混乱した表情を浮かべ、そう力なく吐き捨て俯いてる。
あんな向井の顔……俺、初めて見たかも。
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