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友達以上、恋人未満 29

………あれ、俺… 眠りから覚めた時、一瞬ここが何処か分からなかった。 でもすぐに趣味の悪い壁紙の天井が視界に入って、ここがカラオケBOXだと言うことを思い出す。 寝返りを打とうとしたら、何かが俺にかけられていることに気付いた。 向井のシャツ? 寝てる俺にかけてくれたのかな。 寝起きでちょっとダルい身体を起こして、ぼんやり考えながら座りなおした時に部屋のドアが開いた。 「起きたか?」 「……うん、ごめん…俺、結構寝ちゃった?」 「いや、30分くらいじゃないか?」 意外と時間が経ってなくてよかった。 つか、向井どっか行ってたのかな。 「なぁ、どっか行ってたの?」 「え?!……あ、うんトイレ。」 「そっか。あ、これ…ありがと。」 礼を言ってシャツを渡すと、それを受け取った向井が俺の横に座り、残り少なくなっていたグラスの中のジュースを一気に飲み干した…… そして、深いため息を一つ吐き出す。 「……向井…どうした?!」 さっきまでの元気もなく、静まり返った室内に重い空気が一気に充満する。

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