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友達以上、恋人未満 32
「………それなのに、いつからか鳴より気になる奴が出来てさ……」
「やっぱり……」
「そうだよな。多分、俺はそいつの事が………好き、なんだと思う、鳴よりも。」
「鳴ちゃんより…か。」
鳴ちゃんのあの寂しそうな横顔を思い出した。
なんとなくだけど、鳴ちゃんはそれを向井よりも先に感付いてしまい悩んでいたのかも。
幼なじみ故に、ちょっとした気持ちの変化も感じ取ってしまって向井が自覚する前に気付いて、たまらなくなって自分から別れを切り出した。
なんとなくだけどそんな気がした。
向井は多分こんな鳴ちゃんの気持ちも気付いてはいないんだろうけど。
「鳴には悪いけど………好きなんだ。どうしてもそいつが気になって、気付くとそいつのことばっかり考えてて……」
言葉の選び方を聞いていると、こいつには今、鳴ちゃんの気持ちを分かってあげられる程の余裕はなさそうに思えた。
こいつがそれほどまでに好きになるって…いったい誰なんだろう。
「確かに……鳴ちゃんには悪いけど、そんなに好きならさ、その子に好きって言えばいいじゃん。俺も応援するぜ?」
何も考えず、単純な性格の俺はそう言ってしまったけど、向井は首を縦には振らなかった。
そして続け様に、
「そいつには、恋人がいる。」
全てをシャットアウトするかのように、そうピシャリと言い放った。
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