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友達以上、恋人未満 35

「向井?どうした?」 固まったまま動かない向井の肩を揺すると、ハッとしたように俺に視線を戻し、またすぐ逸らした。 「…………べ、別に……」 「じゃあ、始めるか!あ、せっかくカラオケあるんだから気分高める為におまえの好きなラブソングもバックミュージックとしてかけよう!」 端末の履歴を出し、向井が歌ったラブソングを転送するとすぐにイントロが流れだす。 「準備万端!向井?いいぞ?」 「ちょっ、ちょっと待てって!」 焦る向井をよそに段々と面白くてなってきた俺は、更に調子に乗って向井を煽った。 「まずは俺の目を見て、思いの丈をぶつけろっ。」 「…………………無理。」 「はぁ?無理じゃねーよ。恥ずかしい?それとも俺じゃ気分出ないか?……まぁ、練習だから───」 「そんなことない!!」 練習だから我慢しろって言う前に何故かいきなり凄い剣幕で否定してきた。 「な…ら、さ……そんなマジに考えなくても軽くいこうぜ……?」 そして少しの沈黙の後…… 「分かった。やるよ、やればいいんだろ?でも、恥ずかしいから……俺がいいって言うまで、目…瞑ってて欲しい。」 こいつこんな恥ずかしがりやだったっけ? まぁ、やっとやる気になってくれたら言う通りにすっか。 「分かったよ、ほら。」 俺は向井の方へ身体を向け、とりあえず目だけを瞑って待つ。 そして、向井の両手が俺の肩を掴むとそれは微かに震えているように伝わってきて……… 流れている曲が二番のサビにさしかかった頃、擬似告白タイムは開始された────

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