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4度目の正直 7

車が静かに動き出し、車内にはエンジン音だけが静かに響きだす。 そして、しばらくして廣瀬さんがゆっくりと口を開いた。 「………昨夜、優人坊っちゃんから連絡がありまして、予定より帰国が遅れそうだと……それを渚様に伝えて欲しいとお申し付けられました。」 「そうですか……」 ……やっぱり、そんなことか。 予感はしてた。 だから、意外と自分でも冷静でいれたし、ちゃん返事も出来たと思う。 「渚……様…?大丈夫ですか?」 心配そうに廣瀬さんが俺を覗き込み、その表情は複雑なままで。 「……俺は大丈夫です。あいつにはあいつの事情があるんだろうし。俺がどうこう言ったところで現状は変わりませんから。」 「……渚…様……」 気遣うようにそっと俺の背中に置かれた廣瀬さんの手。 そんなにへこんだように見えたのだろうか。 思いの外、朿のある言い方をしてしまったのは自分でもわかってた。 でも、へこんだとはまた違う……どちらかというと諦めに似たような感情。 数ヶ月前の俺なら、こんなことでも相当へこんだと思う。 でも、今の俺が口にした言葉は…… 「本当に大丈夫です。あいつに振り回されるのは慣れてますから……」 どこか他人事のような、気付けばそんな物言いをしてしまっていた。 強がっているわけじゃない。 そうやって、自分をコントロールする術をいつからか身に付けたからかも……しれない。 じゃないと俺の心はとっくに折れてしまっていたと思うから。 「………渚、様……渚様?」 「え?……あっ、すいません。」 「それと、坊っちゃんからのもう1つの伝言です。」 「もう1つ……?」 「はい……。些か私の口からと言うのも申し訳ないのですが……」 廣瀬さんはそう言いにくそうにもう1つの伝言とやらを俺に伝えてくれた。

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