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4度目の正直 8

「────“渚のことは1日も忘れたことはない……愛している”……と、優人坊っちゃんが渚様に伝えて欲しいと……」 突然そんなことを言われて、咄嗟になんて言ったらいいかわからなかった。 それに、廣瀬さんにそんなことまで伝えさせるなんて、相変わらず俺様だな…… 苦笑しながらもとりあえず、そんなことまで伝えさせてしまったことに礼を言うと、廣瀬さんは慌てて、とんでもないと微笑んでくれた。 「優人坊っちゃんは、渚様のことをとても心配されてました。ですから、きっと安心させたくて…私に伝言を申し付けたんでしょう。……滅多にそんなことを口にする方ではないですから。」 人一倍プライドも高い橘だからわからなくもない。 現に、“好き”は年中言っていたが、“愛してる”は、数回しか言われていない。 それなのに─── 「………ムカつく」 なんで……そんな大事な言葉、伝言とか頼むんだよ。 「渚様?だ、大丈夫ですか?」 膝の上で握り締めていた手に無意識に力が入る。 伝言なんかじゃなく、てめーが直接言いやがれ、バカヤロー。 悲しさと嬉しさの間のような気持ちが押し寄せてきて、俺はたまらなく胸が苦しくなった。 「橘の…………バ、カ───…」 そして鉛のようなどろどろした感情を吐き出したその言葉は、アクセルを踏み込んだエンジン音に掻き消され、一瞬で消えていった。

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