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4度目の正直 11
一度口に出してしまえば、せき止められていた橘への想いがとめどなく溢れてくる。
昨日より、今日……と、俺の心の中で日に日に膨れ上がり、あいつへの想いはいつの間にか目盛りいっぱいになっていた。
その想いに気付かないように必死にフタをしてたのに……
「はぁ………」
ため息が鉛のように重い。
そして、測りきれなくなって溢れ出した想い────
………逢いたい
………触れたい
………キス、したい
もうすぐ向井が戻ってくるのに。
こんなとこで、俺は────
「あ、いたいた!こんなとこに居たのかよ!」
顔を上げれば、息を切らした向井が俺を見下ろしていて、その表情が一瞬で険しさを増す。
だけどすぐにはその意味が分からなかった。
「ど、どうしたんだよ……」
「え………な…」
何が、と言う前に向井の手が俺の頬へと伸びてきて、その温かさに胸の奥の何かに触れた気がした。
「なんで………泣いてんだよ。」
そして、言われて初めて気付く。
俺は……泣いていたんだと。
「俺が居ない間に誰かに何かされたのか?!」
「ち、違う……よ。何でも……」
「何でもないのに、泣くとかおかしいだろ!」
なんでこいつ、ちょっと怒ってるんだろう。
「本当に何でもないんだ……誰にも何もされてないから、大丈夫だよ…ごめん。」
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