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4度目の正直 12
俺だって泣くつもりなんてなかった。
それが恋人を想ってだなんて、女々しすぎる。
そんな俺なんかを本気で心配してくれてるこいつにもの凄く申し訳ない気がして、ただ謝るしか出来ないでいた。
「何で謝るんだよ!とにかく、少し落ち着ける場所行こう…立てる?」
「え?!あ……う、うん。」
無理矢理立たされ、当たり前のように俺の手を取り、繋がれる。
そしてガヤガヤと騒がしい表通りへ出ると、さっきより人が増えたように思えた。
「はぐれないようにちゃんと繋いでろよ?」
繋がれた右手は痛いくらいにしっかりと掴まれていて、俺は返事をする代わりに……気付いたらその手を強く握り返していた。
そして人混みを掻き分けるように俺の手を引いた向井が真っ直ぐと神社の方へと突き進む。
どこ、行くんだろ……
高台にある神社は、花火を打ち上げる場所からは視界になってしまうから行ってもあまり意味はないのに。
「あ、あのさ……神社行くの?あそこからは花火…見えないよ?」
「いいんだよ、ちゃんと考えてるし……花火も、ちゃんと見える。」
含みを持った物言いがちょっとだけ引っ掛かったけど、向井が大丈夫と言うならきっと大丈夫なんだろう。
だから俺は、短く返事をするとおとなしくついて行くことにした。
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