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4度目の正直 13
*
「ここ………」
「なぁ?ちゃんと見えるだろ?あそこから花火が上がるから、もうちょいこっちに来るとよく見えると思う。」
指差す方向は確かにいつも花火が上がる位置だ。
そんなに高いわけではない山の頂上に建つ神社。
その裏にまた奥へ続く道が続いていて、そこを抜けると完全に山の反対側に出る。
そこが向井が言う、“花火が見える場所”だったらしく、穴場中の穴場って感じに俺たち以外誰もいなかった。
「よくこんなとこ知ってたな。」
「前に、………鳴が連れてきてくれたんだ。」
「そ、そう…なんだ。鳴ちゃん、すごい穴場知ってるんだな。」
「……あぁ。なんか、鳴のばーちゃんが昔この辺りに住んでたらしく、穴場のデートスポット教えてやるって教えてくれたらしいぜ。」
「へー…確かにすげー穴場のデートスポットだよな。」
「………あぁ。」
鳴ちゃんのことに話題がいくのをここ最近は避けてただけに、今ちょっと気まずいかも。
「そんな顔するなよ、鳴のことはもうとっくに吹っ切れたから。」
「え………?」
俺、どんな顔してたんだろ………
なんだか、自分の気持ちが不安定過ぎてわからなくなってくる。
さっきまでの涙は完全に引いたけど、俺の心の中はぐるぐると渦を巻くように…悲しみや切なさがまとわりついていた。
橘のことや、鳴ちゃんを想う向井のこと。
正直、どれが原因かなんて分からない。
いや、やっぱり全てなのかもしれない……
そうやって、気付けば自問自答していた。
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