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4度目の正直 18

「いや、あの…仮に俺が男を好きでもおまえ気持ち悪いとか…思わないの?」 「思わねーよ。俺は別に好きに性別なんて関係ないと思ってるし、相原が男だろうと女だろうと好きになってたと思う。そりゃ、親友ってのポジションは嬉しいけど、あの生徒会長に取られて自分の気持ちに気付いたんだ。……親友捨てても恋人がいいって。だから、おまえが辛そうな顔してるのに隣で何もしてやれないのが俺、すげーもどかしかった。そんな顔させてたの全部あの人のせいだろ?俺ならおまえにあんな辛そうな顔絶対にさせないっ。」 「そ、それは………」 確かに橘が原因だけど、それは俺が弱いから。 別に橘のせいではない。 あいつは俺をとても大事にしてくれているし、それは俺が分かってやってればいいと思ってた。 別に誰かに自慢したいとも思ってない。 だけど、向井にはちゃんと橘とのこと言わないと。 「ずっと言おうと思ってたのにタイミングがなくて言えなかったけど、確かに橘とは付き合ってる。でも、向井が心配するような辛いこともないし……」 ────大事にされてる 何故かその最後の一言が言えなかった。 なんで……だ。 「好きなんだよ………渚」 好きなのは橘。 だけど、自分でも気付かないうちに相当弱っていた俺の心。 そして好きだと告げる向井に久しぶりに名前で呼ばれただけでも身体中が反応して、熱くなっていくのが分かった。 「あんな奴、俺が忘れさせてやるから。だから……」 「ちょっ………むか、い…?!」 そして固まったままでいる俺を強く抱き寄せ、次の瞬間唇に温かい何かが触れてきた……… 「………………ッ」 キス……されているんだ、親友に。 いや、親友だと思ってた奴に。 「ちょっ……んんッ…なん…」 なんで…… なんで……なんだよ。 奇しくも向井からのキスは……とても、とても優しくて、 ……橘にされるキスにちょっと似ていた。 「俺の…四度目の正直。やっと言えた………」 キスの合間に譫言みたいにそんなことを呟いた向井の顔は、花火で時々照らされる度に映し出されそれは何故かすごく切なく辛そうに見えた。

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